証拠がない場合の証明方法

傷害や暴行の被害、性犯罪被害など、犯人と被害者との「1対1」の場面での犯罪で、決定的な証拠がない場合には、「言った」「言わない」の話になってしまい、証明ができない、刑事事件にはできない、という話がよく登場します。

しかし、1対1の場面での事件は、本当に、刑事事件にならないのでしょうか?

答えは、NOです。

殺人事件の場面では、1対1の場面がほとんどであり、でも、「1対1」の場面だから、言った、言わない、の話になってしまうから事件にはできない、などという話には普通はまずならないですよね。

決定的な違いは、殺人の場合には、殺害を自作自演はするわけがない。被害自体は、絶対に真実だ、というところです。
これに対して、性犯罪や、傷害の場合には、本当はそんな被害など発生しておらず、同意の上、あるいは、自分で傷付けた上での、自作自演の被害、ということがあり得る、という点にあります。

そうすると、「1対1」だから、というのはやや不正確な話であり、「被害に遭った事実の証明が可能かどうか」という点が重要になってきます。

1対1の場面での被害であろうと、被害の様子が動画や街中の隠しカメラに移されていれば、被害に遭った事実の証明は可能になるかもしれませんし、性犯罪に遭ったと訴える被害者の膣内に、合意であれば付くはずのない傷が付いていたり、怪我を負わされていたり、服を破られていたり、現場から逃げていく様子が防犯カメラに写っていたり、着の身着のまま交番に駆け込んでみたり、「被害に遭った者でなければ取らない自然な行動が取られている」ことの証明が可能であれば、刑事事件にできる場合がたくさんあり、実際にも、処罰している、起訴している事件は、1対1の場面での犯罪がほとんどであると言っても、過言ではありません。

「1対1の判断だから警察は動いてくれなかった」などということを良く聞きますが、実は、本当はそうではない場合が多く、警察で、色々と細かく事情を聞いた結果、「被害に遭ったということが信用できない」と思われてしまって、動いてくれないケースも実は多いのです。

でも、そうだとすれば、本当に被害に遭ったことが間違いないのであれば、こちらの工夫次第で、警察が、「本当に被害に遭ったのではないか」と思ってさえくれれば、動いてもらえる余地が多分にあるということであって、1対1で証拠がないからと諦めるのではなく、警察に、そう思ってもらえる状況証拠を整理し、警察に提供してあげる作業が重要になってきます。

例えば、「本当は男性の家には行きたくなかったのだけれども、上司なので断れず、いやいや落ち込んだ気持ちのままタクシーに乗り、エレベーターで一緒にマンションに上がり、いったんは返ろうとしたのだけれども腕を引っ張られて部屋に連れ込まれ、玄関前で靴が脱げてしまったのだけれどもそれも拾い上げられて部屋に押し込まれ、無理やりベッドに押し倒されて衣服を無理に引っ張られ、相手の眼鏡を押しのけて壊してしまったのだけれども、それでも構わず下着を脱がされて強姦され、膣内に射精されてしまった。泣きながらすぐに下着と服を来てマンションから飛び出し、タクシーで付近の交番にそのまま駆け込んだ。その後、膣内に射精されてしまった場合の対応方法をネットで調べて産婦人科に行って処置してもらい、下着と衣服は全て捨てて新しいものを買い直し、弁護士に相談する方法もあるということで先生にところに相談に来ました。被害に遭って以来、怖くて電気を消すことができずに毎日電機を付けたまま寝ている。」などという事案があった場合には

①落ち込んだ表情でタクシーに乗り、会話もないことの証拠として、タクシー会社からドライブレコーダーの画像提供を受け、運転手からも話を聞く
②浮かない表情でエレベーターに乗っているところ、腕を引っ張られているところが画像に移っていないか、マンション管理人から画像提供を受ける
③靴に、玄関外に落ちている誇りや土等の微物が付着していないかの鑑定
④相手の眼鏡の破損の確認と修理歴の確認
⑤逃げだした後の様子が同じくカメラやドライブレコーダーに写っていないかの確認と運転手からの様子の聴取
⑥本当に被害直後に産婦人科を調べたのか、ネットの履歴の確認
⑦本当に被害直後に下着と着衣を買い直したのか、購買履歴の確認
⑧捨てた着衣がもし残っていれば、無理やり引っ張られて繊維が伸びてしまっていないかの鑑定
⑨毎日深夜に電気が付けっぱなしになっているかどうか、電力会社への裏付け

などなどの調査を、私なら行います。これらが本当にそのとおりであって、被害者が何一つ嘘を付いていないことが証拠を持って裏付けられるとすれば、それを聞いた警察官はどう思うでしょうか?被害が起こったことが本当だと分かってくれれば、きっと動いてくれると思います。

本来は、警察の方ですべての事件についてこのような裏付け捜査をしてくれないとならないのですが、残念ながら、そこまでせずに、話を聞いただけで早合点して誤った判断をしてしまう場合も少なくありません。

殺人事件などの場合には、上記のように、被害者あるいは目撃者が話したことの一つ一つの裏付けを丁寧にみっちりと確認して、話の内容と、裏付け証拠が事細かにぴたりと一致するか否かを見極めます。

本当にことを話している人は、どこまでも、いつまでも、どんなに調べても、全てが一致します。
逆に、大概の、捕まってくる犯人の話というのは、ことごとく、一致しない、つまり、嘘を付いていることが多いのです。

その違いをきちんと出し、「被害者は嘘を言っていない。被害事実はあったのだ。」ということさえ分かってもらえれば、警察が動いてくれることは多いです。

これも、刑事告訴の手法の一つです。